フレンチテューバを求めてフランスへ

楽器収集癖の有る私は以前よりフレンチテューバが欲しいと思っていました。
2003年に結婚し、新婚旅行をどこにしようかとなったときに、「フランスに行ったら中古のフレンチテューバが見つかるかも」と言う理由で新婚旅行の行き先をイギリス・フランスにしました。

楽器屋や中古屋等も廻りましたが出物は無く、一縷の望みをかけて5本ピストンのサクソルンを作っているクルトワの工場に行きました。

フレンチテューバとは?

フレンチ・テューバはC管の小型チューバで、サクソルンから低音域を拡張すべくフランスで発達しました。フレンチテューバというのは、主に英語圏や日本での呼び方で、本国フランスでは、Tuba UtまたはSaxhorn Basse en Ut 6 pistons(C管サクソルンバス 6ピストン)などと呼ばれ、サクソルンバスの一種という括りです。フランスの楽曲で「Tuba Ut」とある場合は、この楽器が想定されていることが多く(ジョセフ・エドゥワール・バラ作曲の「序奏とセレナーデ」にもその表記有り)、1970年代頃まで使われていました。

6本のピストン式のバルブを備え、1970年頃まで、バス・チューバと共に、あるいは単独で用いられていました。ラヴェル編曲の「展覧会の絵」の「ビドロ」にはチューバのソロが設けられていますが、高音域が続くこの曲では、当時のフランスでテューバの一種として使用されていたこの楽器で演奏されていました。それを見た外国人が珍しがって「フランスのテューバ=フレンチテューバ」と呼び定着したようです。

 

ユーフォニアムでは3番ピストンを押すと一音半下がりますが、フレンチ・テューバやサクソルンバス等は3番ピストンを押すと二音下がります。しかし、3番管の継ぎ足し管を外す事でユーフォニアムと同じように一音半下がるシステムに出来るものも有ります。

4番ピストンはユーフォと同じで二音半、5番ピストンは半音よりやや低め、6番ピストンは三音半(下のファの音)が出ます。

なぜ2番と同じ働きをする5番が付いているかと言うと、「ビドロ」のソロはC管の記譜でもシャープ5つの嬰ト短調、それをB管の楽器で吹こうとすると、シャープ7つの嬰イ短調という大変吹きにくい調性になります。しかし、フレンチ・チューバの場合、半音下がる5番ピストンを押したままにすることによりH管の楽器になり、臨時記号なしのイ短調で演奏可能になります。

 

楽器の形は殆どのフレンチテューバはバリトンホーンやサクソルンバスのようにピストンの後ろにメインの管が配置されていますが、中にはユーフォニアムのようなフォルムの楽器も存在します。

サクソルン型の楽器でも2種類有り、マウスピースから1番ピストンに行くまでにチューニング管のあるタイプが主流ですが、ユーフォニアムと同じようにマウスピースからすぐに1番ピストンに繋がり、6番ピストンを出てからチューニング管になる物も有ります。

ユーフォニアムタイプの楽器でも、右手で3本、左手で3本のピストンを操作するタイプと、右手で4本、左手で2本のピストンを操作する楽器が有ります。

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サクソルンフォルムタイプ

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ユーフォニアムフォルム、右手3本、左手3本ピストン操作タイプ

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ユーフォニアムフォルム、右手4本、左手2本ピストン操作タイプ

サクソルンフォルムでユーフォニアムと同じようにマウスピースからすぐに1番ピストンに繋がり、6番ピストンを出てから

チューニング管になるタイプの紹介(PROJECT EUPHONIUM(中古金管楽器通販サイト)

アントワヌ・クルトワ 工場見学

2003年9月29日、新婚旅行の自由時間を使ってクルトワの工場へ。「ベルヴィル駅」と言うところで下車し探したが、なかなか見つからず。

路地を入ったところに有った小さな工場。英語が話せる気さくなおっちゃんが対応してくれました。
なんとか片言の英語で必死に会話しました。「学生か?」と聞かれ「旅行者で、ユーフォニアム奏者だ」と答えました。「誰かに習ってんのか?」と聞かれたので「S・ミードのレッスン受けた」と言うと、このおっちゃん自身テューバを吹くそうで、メル・カルバートソン氏に習ってたと教えてくれました。工場の中や、バフのかけ方とかを実演してくれたり、ラッカーのかける部屋なども見せてくれました。

「ここには6本ピストンでC管のフレンチテューバを探しに来た。無いのか?」と聞くと、「あーすまんな~、もうだいぶ前から作ってないねん」との事。  残念!!
仕方が無いので5本ピストンのサクソルンを試奏させてもらう事にしました。
この当時は、現在日本に入ってきている、Growのメンバーの川原君が使っている、4本ピストンでコンペ・トリガー付きのサクソルンはまだ有りませんでしたが、おっちゃんが「もうすぐこれの新しい、スゴイんが出来るンやで~」と言っていました。

その後、入手まで

 

フランスでは入手できませんでしたが、その後2009年末に中古サイトにケノンのフレンチテューバが入荷したので購入。こういう希少なものは実物をじっくり見たり試奏してから決められないので、とりあえず出たら即買いです。しかし値段の割に傷や凹みが多く、あちこち部分的に管厚が薄くなった箇所にパッチ(当て板)があったり、行進用譜面立てのホルダーが外されてました。さらにピッチが438hzよりやや低めというところで、実戦で用いるには、マウスパイプを短くし支柱を移動させるなどの改造が必要な状態でした。

まあ、すぐに使うというわけでもないので、とりあえずしばらくはそのままにしていましたが、その後2010年の秋にヤフーオークションに同じケノンのフレンチテューバが出品され、それを落札。値段も最初の物より安く、また程度も良く、主管に継ぎ足してB♭にする管も付いていました。ただ、ケースが箱型でかなり傷んでおり、ケースは最初の楽器の方が形も楽器のフォルムで傷みも無く程度が良かったので、そちらを使う事にしました。

最初の楽器を後のケースに入れてヤフオクで売りました。新しい楽器はその後レストアに出し、とても綺麗に甦りました。

B♭管でも使えますが、各管をだいぶ抜かないといけないのと、音抜けが悪く、やはりC管で使用する方が良い音がしました。

2016年のリサイタル「音の博物館」では、フレンチテューバの為に作曲された、J.Ed.バラの「序奏とセレナーデ」を演奏しました。

楽譜はinCへ音記号で書かれており、私はB♭の音を「ド」と読み、ピストン開放で吹いていますので、C管の楽器ではややこしくなるので、楽譜をinCト音記号に書き換えて演奏しました。

 

フレンチテューバの演奏動画

​購入したフレンチテューバ

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最初に購入したもの  
後から購入したもの  
後から購入した楽器の主な損傷個所  
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2台並べて撮影。2010年当時のスマホでの撮影なので画像が粗い・・・・ 一時とはいえフレンチテューバを同時に2台所有するなんて、PROJECT EUPHONIUMさんを除けば私くらいなもんかも??

フレンチテューバの今

フレンチテューバはビンテージ楽器、またはピリオド楽器として、中古が入荷するのを待つしかありませんでしたが、コンペンセイティングシステム搭載のフロントアクションユーフォニアムFestivoや、ダブルベルユーフォニアムを作って販売中のWessex Tubasというメーカーがフレンチテューバも作って販売中です。
 
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形はユーフォニアムフォルム、右手3本、左手3本ピストン操作タイプ。銀メッキとラッカーもありますが、どうもWessexの楽器は造りがあまいとの話です。

​この楽器を使って「展覧会の絵」の「ヴィドロ」を演奏している動画 https://youtu.be/28ZN7rPCxXs

この楽器の運指を説明した動画 https://youtu.be/sljgjXNUo9Y

Wessex Tubasのホームページ