ウィルソン ユーフォニアム FA2975BS発売記念レビュー
(2015年12月4日公開)
2015年に新発売となったウィルソンのフロントアクション・コンペンセイティングユーフォニアム「FA2975BS」ですが、かつて30年程前に「カナディアンブラスCB-30SP」として一時期販売されていました。
これから購入しようかと考えてる人や、一体どんな楽器かと疑問に思っている人も多いと思います。
そんな人のためにカナディアンブラスCB-30spを1993年から30年間使用し続け、この楽器のことを誰よりも知り尽くしている私が、FA2975BSついて再検証してみたいと思います。
フロントアクションのユーフォニアムはアメリカのキングやコーンが有名ですし、ヤマハもYEP211という機種を作っていましたが、
どれもアップライトのユーフォニアムに比べて少し細めで、ユーフォニアムとイギリスのバリトンの中間のような音色でした。
またそのどれにもコンペンセイティング・システムは搭載されていませんでした。しかし1960年代よりフロントアクションのユーフォニアムでコンペンセイティング・システムを搭載していたマルツァンモデルにカナディアンブラスのトロンボーン奏者、ユージン・ワッツが眼を付けWillsonが改良しCB-30を製作しました。
出典:PROJECT EUPHONIUM 岡山英一氏
「カナディアンブラスコレクション」は、カナディアンブラス結成20周年を記念して、1991年から順次メンバーが監修して、新しいモデルを作ったということになっています。ワッツ氏はその前はヤマハのYEP-641GPを使用していました。
ウィルソンにTA2900を作らせたDEG・ゲッツェンが、マルツァンモデルを改良したモデルをウィルソンで作らせて、「カナディアンブラスコレクション」というブランドで販売。販売元はカナディアンブラスエンタープライズ株式会社、日本の代理店はプリマ楽器でした。その後これをウィルソンブランドでも販売しました。 Willsonの場合、日本に入ってくるときにはなぜか型番が変わるようで日本で取り扱っているものはTA3737となっていましたが、アメリカの代理店では2975となっていました。 (引用:岡山氏FB投稿より)
オリジナルからの変更(改造)箇所
ピストンキャップ&ボトムをGPに変更
私はピストンキャップ、ボタンをゴールドプレートのヘビータイプに交換していますが、元々はノーマルな旧タイプでした。
元々付いてた旧タイプ
今はGPのヘヴィタイプを使ってます
新発売のFA2975BSは最初から今のTAシリーズと同じヘビータイプのようです。
(出典:三木楽器心斎橋店管楽器売り場FB)
出典:ツイッター ぴすとん@楽器買え買えおばさん
ピストンが斜めになっており、演奏中にピストンから水が漏れる事は無いので、ウォーターポットを付ける必要が無く、ボトムキャップにもそのための突起は有りません。 (私はTA2910GPをBAZZのボトムに変えているのでカナディアンにはTA2910GPから外したボトムキャップを装着しています)
元々付いてた突起無しボトムキャップ
今は TA2910のボトムキャップを使用
カナディアンブラスCB-30SPはウォーターポット用の突起無しボトムでしたが、FA2975BSのボトムキャップは突起付きのようです。これならヤマハの321用のビニール製のウォーターポットが装着できるかも知れませんね。
出典:ツイッター ぴすとん@楽器買え買えおばさん
ピストンボタントップをリペア
神戸市北区で管楽器のオリジナルパーツなどを制作されているシクサージャパンさんにて、ピストンボタントップのシェルをリペアしてもらいました。サヌカイト(讃岐石)、香木の花梨杢、アバロン尖閣ブルーの3種類に付け替える事が出来ます。
4番スライドにアマドウォーターキィ取り付け
4番管にも水は溜まります。元々はウォーターキイは付いてないので水が溜まると一々管を抜いて捨てないといけませんが、私はヤマハアトリエ大阪さんでアマドウィーターキイを取りつけてもらいました。
アマドウォーターキイのボタンは内側向き。なぜかと言うと外向きに付いていたらお腹に当たって勝手に水が抜けて服がビショビショに濡れるからです。
メインチューニングスライドにトリガー装着
ピッチ、抜き加減も調整可能
トリガー押した時
裏側です。主管は上向きに付いていて、座奏の時はテューバのように演奏しながら左手で操作してピッチの調整が可能ですが、
私はよりスムーズに音程補正をしたいと思い、グランド楽器で主管トリガーを取りつけてもらいました。
FA2975BS(CB-30SP)考察
マウスパイプの位置はTAシリーズと比べてやや低め。そのため座奏の場合の枕は高めにセッティングが必要です。
Willsonと並ぶユーフォメーカーのBessonも昔このタイプのものを作っていたようです(1931年頃)。
これはWillsonのものとは管の巻き方が異なっていたようでWillsonの管が1,2,3番管からでる支管が上方に伸びていて左手で操作できたのに対して,このようになってはいなかったそうです。,2番が上方に,3,4番とメインの管が下に伸びていたそうです。
Willsonの2975との元になった楽器にMarzanというメーカーのものがあります。 Fred Marzanはシンシナティ出身のテューバ奏者で
自分の名前を付けたテューバとユーフォを使用していたようです。
Marzanモデルは現在のWillson 2975とは異なり全ての管が上向きに付いていたようです.そのため,上側に重心が偏りバランスの悪い楽器となってしまったそうです。(引用:牧原氏HP 「Saxhorn mania Mackeyの音楽室」より)
右がMarzanモデル
出典:「Saxhorn mania Mackeyの音楽室」 牧原真治 氏
Marzanモデルは、初期のものと後期のものでは4番管の配置が違う物が有るようです。後期のものは、現在の楽器と同じように下に向かっています。
出典:「Saxhorn mania Mackeyの音楽室」 牧原真治 氏
wessexより新発売となったフロントアクション4ピストンコンペンセイティングユーフォニアム「Festivo」。管の巻き方は上記のBessonの巻き方を元にしているそうです。詳しくはwessexサイトを参照下さい
wessexのフロントアクション4ピストンコンペンセイティングユーフォニアム「Festivo」のレビュー動画
MarzanモデルのユーフォはWilli Kurathという人が製造していたようですが、ごく短い期間marzan自身の手によっても作られていたようです。その後、Willi Kurathの手によってマルッツァンデザインのユーフォとして制作されたようです。
これがなぜWillsonのモデルになるかというと、Willy Kurath Sr.の息子Willi, Jr.(ユーフォニアム奏者)によってできたブランドがWillson(Willyの息子でWillson)であるからです。 Kurathのブランド名でも同じ楽器が出ていたようです。
楽器の性能自体は悪くなかったようですがこの楽器が製造販売された1960年代はコーンのコンストレーションが全盛の時代でこの楽器が受け入れられることはありませんでした。
当時使用していたのはアメリカ海軍バンドでブラッシュの後を継いだアール・ラウダー(Earl Louder)でした(現在はヒルスブルナーを使用しています)。その後、カナディアンブラスのユージン・ワッツが目をつけ、現在ではコンペのウィルソン製のユーフォを使用しているようです。(引用:牧原氏HP 「Saxhorn mania Mackeyの音楽室」より)
また、牧原氏によると、昭和50年頃に、三浦徹先生のレッスンを受けた時、先生がマルツァンモデルを使用されていたそうです。
マルツァンモデルはウィルソン社によって、ノン・コンペの物や3本ピストンモデル、アルトホルン等も制作されていました。日本のカタログには載って無ませんが、海外向けのカタログには載っていました。
ウィルソンのカタログ マルツァンモデル4ピストン、ノン・コンペの品番は3719 アルトホルンの品番は3409
PROJECT EUPHONIUMで販売された4ピストンノンコンペモデル。主管トリガー付き
PROJECT EUPHONIUMで販売された3ピストンモデル。主管トリガー付き
ネットで見つけたマルツァンモデル。メインチューニングスライドトリガー付きです。私の楽器は裏側の主管の間にレバーをつけていますが、この楽器は表側3番管の所に付いています。どっちが操作しやすいかな??
←刻印はカナディアンブラス ↑ しかし、こんなところにしっかりと「Willson」と刻印が
ベルの大きさは290㎜とTA2900シリーズを流用しています。ボアも15.0-16.8㎜と共通なのでTAシリーズのピストンキャップやボタン、ボトムキャップと交換可能です。
左がカナディアン(290mm)右はTA2910(310mm)
ウォーターキイは1つしか付いていません。1.2.3番管が上向きなので水は溜まらず、アップライトのユーフォに比べ水抜きはメインの一か所で済みますが、その分の水が集まるので直ぐに溜まります。
←実はこの部分にも水が溜まります。その場合は楽器を傾けてウォーターキイの方へ水を流してやらないといけません。
←ここの溶接がバキッと外れる事があります。(過去4回)
吹いた感じの第一印象は、まず普通のユーフォニアムはベルが右向きなので、音も右側から聞こえて来ますが、カナディアンブラス(FA2975BS)ではベルが反対側の左側に向いているので、音の聞こえ方が逆になります(左耳から聞こえてくるので最初は気持ち悪いと言うか変な感じですがそのうち慣れます)。
しかし、ベルが左側を向いているおかげで金管アンサンブル等、舞台の上手に座る場合トランペット等トップの動きがよく見えて
アンサンブルでは合わせやすいです。普通の Euph はベルが邪魔で Tp 等が指示を出しているのが見えにくいですよね。また、
ベルが右向きだと客席と反対の方を向いてしまいます。反響版の有るホールなどではましですが、音響の悪い学校の講堂などでは音が中にこもってしまい客席まで届きません。そう言った問題もカナディアンブラス(FA2975BS)では解消されています。
肝心の音ですが、他の金管プレイヤーにとても好評で合わせやすいと言われます。力まずに吹けて明るくタイトな感じに響きます。ソロで使うにはあの Euph 独特の深みは出しにくいかもしれませんが、オケで展覧会や惑星等のソロを吹くにはよく合うと思います。
そして最大の特徴が特に4番管を使用したときの音抜けの良さです。
普通のコンペンセイティングシステムの付いたユーフォニアムの場合4番ピストンから出た息は、3・2・1番と、空気と振動がピストンの中で4番に向かうまでと逆方向に流れてしまい、これが4番ピストンを使用したときによく感じる、抵抗感や音抜けの悪さに大きく影響していると考えられます。
(一度4番スライドを抜いた上で4番ピストンを押して息を入れ、息がどちら側から出てくるか調べてみてください。4番ピストンから出ている管ではなく、1番ピストンから出ている管から息が出てきます。)
カナディアンブラス(FA2975BS)の場合、4番ピストンから出た息はもう一度1番ピストンに入りますので、4番ピストンに来るまでと同じ方向に流れます。これによって、抵抗感が格段に減り、4番ピストン(コンペンセイティングシステム)使用時も、音色や吹奏感が大きく変わる事無く演奏する事が可能です。
普通のユーフォは音が客席とは反対に飛びますが、カナディアン(FA2975BS)なら音は客席へ向かいます。
普通のユーフォのベルの向きだと・・・・
う~ん、見えねぇ!
カナディアンブラス(FA2975BS)のベルの向きだと・・・・
おぉ~、よく見える!
カナディアンブラスモデル(FA2975BS)は並列4本ピストンなので、4番ピストンは小指で操作する事になります。私は大学に入るまでヤマハの YEP321S を使っていたのですぐに勘を取り戻し、どちらの楽器でも難なく演奏できますが、サイドアクションしか吹いた事の無い人は難しいと思います。 (左手で楽器を下の方から抱きかかえる様にすると左手で4番ピストンの操作が可能ですし、立奏も可能です。)
コンペンセイティング・システムなので、普通の楽器よりピストンが長くて重く、またアップライトアクションに比べ押す時に真下に降りるのでは無く、斜め横に降りる事になりますのでやはり早いパッセージは難しいです。
4番ピストンも、普通の Euph はコンペンセイティングの楽器でも1~3番に比べて短いですが、カナディアン(FA2975BS)は並列ピストンですので1~3番と同じだけの長さが有り、やはり重いです。
左がTA2910GPのピストン。右がカナディアン(FA2975BS)のピストン
楽器はずいぶん軽く作られています。楽器の側面、底部のプロテクターも普通は板と棒が付いていますがカナディアン(FA2975BS)は棒だけです。反面凹みには弱いです。
底部分
側面
ただ、立奏では、右手は親指がリングにかかっているだけなので、楽器を支える事が出来ません。その為左手に楽器の全重量がかかりますので、長時間の立奏等はかなりしんどいです。そこで私は Sax 用のストラップを使用し、4番菅の支柱に引っ掛けて、それを左肩に掛けて演奏しています。
ストラップを使用すると立奏時でも左手が自由に使え、音程補正や早いパッセージで左手で4番ピストンの操作が容易に出来ます。私のホームページのコンサートブログ等に、演奏中の写真が載っています。
親指リングはコーンやキングなどフロントアクションユーフォや楕円形バリトン等にも付いていますが、大概のものは板状の金属を丸く輪にしているので、角が指に当たって痛い事が有ります。
しかしカナディアンブラス(FA2975BS)は円柱を輪にしているので角が無く、指が痛くなる事は無いので使いやすいです。
この角が痛いのよ・・・・
角が無くて痛 くな~い
ここの支柱にフックをかけます
カナディアンブラスのハードケース。購入してずっと物置に入れたきりで使ってません。 FA2975BSのカタログやグローバルのホームページには「ソフトケース付き」と有りますが、ハードケースは付いて無いんでしょうか?
重厚なケース
厚みが有るケース
色あせず輝くカナディアンブラスのロゴ
このように収まります
カナディアンブラスはフロントピストンなので厚みが有り、普通のソフトケースには入れにくいのでベル部分までガバッと開くケースを使ってますが、楽器と同じ年数使ってるのでそろそろくたびれてきています。 今はベル部分まで開くケース、売ってないんだよな・・・
ピストンが飛び出してるので横からぶつかったりすると曲がって動かなくなるかも知れないので、バンドで止めてから収納してます。(このバンドも20年以上使ってるからゴムが伸びきってる)
出典:管楽器専門店ダクFB投稿記事より
出典:株式会社永江楽器ホームページより
左はDACさんがFBに載せていた、FA2975BSに付属するというソフトケース。ベルの部分にもチャックが付いていて、中・右のギャラックス製のソフトケースに似ていますが、これってベルと反対側が途中までしか開かないんですよ・・・
(付属のケーケースはどうなんだろ?)
ソフトケース買い替え(2020/10/15)
楽器を購入した1993年から27年間使ってきた「FJ ハヤシ」のソフトケース。これはベルの所までファスナーが着いてて、パックリと半分に大きく開くので、フロントピストンで横幅のあるカナディアンブラスモデル専用に使ってました。長年使ってるので汚れてきたし、ファスナーの縁がホツレて来たり、リュックのベルトも細いので肩に食い込んで痛かったりと、そろそろ買い替えたいなぁと思ってましたが、現行モデルのハヤシのケースはベルの部分までファスナーが付いておらず大きく開かないし、GALAXと言うメーカーのはベルの部分にはファスナーが付いているが反対側が途中までしかファスナーがないので結局大きく開かない。さて、どうしたもんかと思ってました。
そんな中、楽天で見つけたのがBROPROと言うメーカーのソフトケース。ケース自体の厚みも有るので横幅の有るカナディアンブラスにピッタリだし、側面全体がファスナーで開くので楽器の出し入れも楽チン。ポケットも今迄のハヤシのより大きくマチも有るのでたくさん入る。1つだけ難点なのは、ショルダー用のベルトを取り付ける金具が蓋部分に付いているので、ショルダー用のベルトを使用している場合は楽器の出し入れの時にショルダーのベルトを一々外さないといけないのが面倒。(結局ショルダーでは使用しないことにし、ベルトはヤフオクで売ってしまいました)
このBROPROというメーカーのソフトケース、一時期楽天市場に下倉楽器のネットショップで販売されてましたが、私が購入してしばらくするとアクセスできなくなっていました。輸入したのが売り切れたのかもしれません。それ以降、どこを探しても売ってなかったのですが、最近ネットショップを発見しました。
BROPROは、ケースの形やポケット内のペンホルダー付き小ポケットやケースベル部分、底部分の底足などの形状がプロテックのケースと酷似しています。なのに値段はBROPROの方が安い(プロテック24300円、BROPROは19800円)、サイトも中国語なのでもしかしたら中国製でプロテックのコピーかもしれません(でもベル部分の底足はプロテック4つなのに対しBROPROが5つ、BROPROのケースはベル部分までファスナーが付いており大きく開くがプロテックはベル外周までファスナーが無く大きく開きません。 どちらかというとBROPROの方がゴージャスです。
私がカナディアンブラスを購入したのは 1993年3月20日で、今年で30年になります。 大阪芸大も1台購入しましたがあまり活用していません。ちなみに選定は、私と大阪市音の三宅氏でした。発売した当時は雑誌などでも紹介され、話題にも登りましたが、実際に購入し使用しているのは関西では私ぐらいです。 音楽鑑賞会などで、ブラスアンサンブル編成の時は必ずカナディアンを使用していますし、ブラスフェイヴァリッツのライヴやコンサートもカナディアンを使っています。 また曽我香織さんとデュオコンサートやライブではカナディアンを使用していますので、機会があったらカナディアンの音色を聞いてみて下さい。
曽我香織さんとのデュオコンサート
一般的なユーフォニアムのデュエットでは2本ともベルが客席から見て左向きなのでどちらの音も左側から聞こえて区別がつきにくくなります。そして奏者がお互いにコミュニケーションを深めようと向き合う程に、左側の奏者のベルは客席の方を向き、右側の奏者のベルは舞台の奥の方を向いてしまうので音量や聞こえ方に差が出てしまいます。
しかし、ユーフォニアムのデュエットにおいて、一本をカナディアンブラスモデル(FA2975BS)にする事によってベルの向きが対称になり、音の区別もつきやすくなります。
どちらのベルも外側へ向けることによりダイナミックで音の広がりがより立体的なステレオ効果が発揮される演奏や、どちらのベルも内側へ向けて柔らかく奥行きの有る演奏と二通りの演奏スタイルが取れ、音楽的・視覚的に斬新な演奏になります。
デュオ演奏の動画 ホールニューワールド アヴェマリア ルパン三世のテーマ’80 美女と野獣
カナディアンブラスモデル(FA2975BS)を2本同時に使用した例
2004年12月7日開催、ブラス・スカラーズ大阪 第5回演奏会(松方ホール)にて。
曲はエリック・イウェイゼン作曲のウェスタン・ファンファーレ。この曲は金管5重奏版が有名だが、大編成金管アンサンブル版も存在します。この編成ではホルンが6パート有り、その5番、6番はオプションでユーフォニアムで演奏できます。この時はユーフォニアムが2本必要となりましたが、普段私はブラスアンサンブルでの演奏にカナディアンブラスモデル(FA2975BS)を使用しており、もう1本を普通のユーフォニアムにするのも不自然なので、当時所有していた石田忠昭さんよりお借りして、トロンボーン奏者の喜井宏君が演奏しました。カナディアンブラスモデル(FA2975BS)が2本同時にステージに乗ったのは全国でもこの演奏会だけだと思います。
オーケストラでの使用
オーケストラでテナーテューバとしての使用例(ホルストの惑星)。惑星ではテナーテューバは火星、木星、天王星に登場しますが、一般的なユーフォニアムを使用して左からトロンボーン、テューバ、テナーテューバ、の順で並ぶと、テューバとベルの向きが逆な為(テューバは右向き、ユーフォニアムは左向き)テューバとベルの衝突が起きかねません。また、ひな壇の一番右端に座ると、一般的なユーフォニアムではベルが邪魔で指揮が良く見えません。
では、左からトロンボーン、ユーフォニアム、テューバの順で並ぶとどうなるか。
テューバとのベルの衝突は無くなりますが、結局ベルで指揮は見えにくいのは変わりません。それに土星などテナーテューバは休みだがトロンボーンとテューバが一緒に動くときに、間にテナーテューバが居るとトロンボーンとテューバのコンタクトが取れず合わせにくくなります。
テナーテューバとしてカナディアンブラスモデル(FA2975BS)を使用すると、トロンボーンとテューバのコンタクトの邪魔をすることなく、また指揮も見やすく、ベルが客席の方を向いているので音も良く抜けます。
惑星はそんなに低い音は出てきませんが、英雄の生涯など低音域を使用する楽曲の場合、コンペンセイティングシステム搭載のカナディアンブラスモデル(FA2975BS)なら問題なく演奏できます。
オーケストラでテナーテューバとしての使用例(展覧会の絵よりヴィドロ)
展覧会の絵ではヴィドロのソロのみユーフォニアムが登場します。ソロなのでテューバと一緒に吹くわけではないので一般的なユーフォニアムを使用してもテューバとベルの衝突は起きにくいですが、やはり舞台の右側に座ると、一般的なユーフォニアムではベルが邪魔で指揮が良く見えませんのでこの時もカナディアンを使用しました。
最後に一言
テューバ奏者やトランペット奏者は好みや用途に応じて楽器を持ち替えて使用しています。また、チューバはC管、B♭管、F管、Es管と色んな調が有り、形もユーフォニアムのようないわゆる縦バスと言われるものや、フロントアクションのピストン式、ロータリーの物など多種多様なのに、なぜユーフォニアム奏者は皆同じ(ブリティッシュスタイル)の楽器しか使わないのでしょうか?(中にはサクソルンやドイツ式バリトン、テノールホルンを吹いてる人も居ますが・・)
ソロやブラスアンサンブル等、ユーフォニアムが1本の時はカナディアンでも良いと思うが、吹奏楽など2人で演奏する時にはちょっと躊躇するので使用してませんでしたが、でも普通に吹奏楽でフロントアクションやロータリーのテューバとアップライトのバスが一緒に使われてるのを見かけるし、カナディアンを吹奏楽で使っても問題ないと思います。
ユーフォニアム奏者も演奏する形態や用途によって求められる音色が違うはずです。また作曲者の意図等によった楽器選びも必要と思いますが、そう言った事を考えているのは私だけなんでしょうか? まぁ、ユーフォニアムなんて高い買い物ですし、1本有れば殆ど何でも事足りるので何本も楽器持ってる人は稀だと思いますが、カナディアンブラスモデル(FA2975BS)がメインと言う人が居てもいいのではと思います。