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ヤマハユーフォニアムYEP321S改造歴
2013年3月にヤフオクにて購入したヤマハユーフォニアムYEP321S。
同時に購入したヤマハアトリエ製第5ロータリーヴァルブ付第4抜差管と併せて様々な改造を施し世界で唯一の楽器となりました。
ここではその改造の履歴を順を追って解説致します。
その1. ヤマハアトリエ製第5ロータリーヴァルブ付第4抜差管
ヤマハYEP321はノンコンペの楽器なのでペダルのEより下の音は半音くらい高くなります。なので楽譜に書かれた音より半音下の運指でようやく吹けるのですが、Cを吹くためにHの指(1.2.3.4)押して吹く為、実質Hの音は出せません。
この第5ロータリヴァルブ付き第4抜き差し管は今から数十年前にヤマハが正式にオプションパーツとして出していた物で、第4抜差管にロータリーを付け、ロータリー操作で3/4音下がる設定にしてあります。第5ロータリーは単体では使用出来ず、第4ヴァルヴの操作に加えて使います。これでペダルB♭の半音上のHが出せるようになります。


第5ロータリーを使用して正しい音程で演奏するための運指
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F 4
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E 2-4
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Eb 2-4-5
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D 1-4-5
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Db 2-3-4-5
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C 1-3-4-5
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B 1-2-3-4-5
-
Bb 0
その2. 管体レストア
まずはヤフオクで購入した楽器を綺麗に洗い、磨きました。その後森ノ宮にある管楽器修理工房KBFさんで凹み等を修理してレストアました。
その3. 管体サテン化
レストアされて綺麗になった管体を今度は浜松にある金管楽器工房永井さんで
サテン処理してもらいました

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その4. BUZZボトムキャップとウォーターポット装着
次は中島楽器さんが販売しているBUZZボトムキャップとヤマハYEP321用の
ウォーターポットを装着。
ヤマハウォーターポットはYEP-321のモデルチェンジ後の機種にはボトムキャップの下にプラスチックのアダプターをはめ込む事で装着できますが、製造番号No.100001以前の楽器には穴が小さくアダプターが入らない為使用できません。しかし、BUZZのボトムキャップにはウォーターポット用の突起が有る為それを購入して装着しました。
通常のボトムキャップは、装着時にヴァルヴケーシングのネジ部分を覆い隠すように設計されていますが。BUZZ ボトムキャップは、装着するとネジが締りきらないようになっています。これによって、キャップの底にケーシングが密着し、効率よく振動を伝える事が出来、その上、底部分が純正のキャップよりも厚めに設計されているので、さらに振動を増幅させているようです。実際に装着すると、音の密度が濃くなって、音色に深みが出る感じになります。


その5. 4番管付属ロータリーの可動部をボールジョイント化
及び1,3,4番管アマドウォーターキイ取り付け加工
4番管の操作レバーとロータリー可動部は、元々はプラスチックのコネクターを介しての操作だったので、プラスチック製のコネクターの両端が経年と共に擦り減っていき、いずれは使えなくなる事が明白でした。
同じYEP321に第5ロータリー付き4番管を使用されているサン・ラ氏がブログでコネクターをボールジョイント化したと言う記事を読み、私もヤマハアトリエ大阪さんで加工してもらいました。併せてヤフオクで大量購入したアマドウォーターキイを1、3、4番管に取りつけてもらいました

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その6. Klangの樹脂製バルブガイドに変更
旧型の321のピストンガイドの爪は金属製で、ピストン操作時にカタカタと音がしたり、また経年劣化ですり減ってしまってもメーカーが部品の生産をを中止したので使用者は困って居ましたが、管楽器修理工房㈱Klang(クラング)さんが樹脂製のピストンガイドを制作されヤフーショッピングで販売中です。器用な人は自分でも交換できると思いますが、自信の無い人は楽器屋さんでやってもらいましょう。
格段に音が静かになりました。動きもスムーズ。



その7. Klangのフェルトに交換
同じくKiangさん特製の高耐久・絶妙なストップ感を目指し開発・製作されたピストンフェルトに交換。フェルトに樹脂を浸漬させた特殊素材を採用しており、通常のフェルトよりも耐水・耐油性に優れているそうです。こちらもヤフーショッピングで購入可能です。


その8. シクサージャパンにてピストンボタンをソーダライトに変更
神戸市北区で管楽器のオリジナルパーツなどを制作されているシクサージャパンさんにて、ピストンボタントップのシェルを天然石のソーダライトにリペアしてもらいました。

その9. ピストンバネをミードスプリングに変更
以前、 管楽器修理工房Kiangさん特製の高耐久・絶妙なストップ感を目指し開発・製作されたピストンフェルトに交換したところ、それまでの純正フェルトの「フワッ」とした止まり方に比べ、大分硬い造りで「ピタッ」と言うか「コンッ」て感じで止まるので音は大きめになり、しかし衝撃を吸収しきれないのか、ピストン内部のバネが「ビーン」と振動する音が聞こえるようになりました。
元々ピストン内部でピストン下部とかにバネが当たって「カチャカチャ」音がするのがキライで、ウィルソンやカナディアンブラスでもベッソンのソヴェリン用の、ビニールチューブでコーティングしてあるバネを使ってるんですが、YAMAHAのバネにもそんな風に出来ないかと、ドンキのパーティーグッズ売り場で見たことの有る、ジュース早飲み競争用の極細のビニールストローを通して見ました。
ピストン作動音は格段に静かになり、ビーンと言う振動音も無くなりましたが、バネにチューブを巻くと太さが増し、バネを縮めた時の高さがノーマルの時より幾分高くなり、ピストン押したときに下まで下がり切らない感じになります。ピストン押すと一応下がりますが、ぐっと押し込むとまだ少し下がります。つまりピストンが下がりきってない感じで、息の通り道が完全に繋がってない感じです。
吹いてみた感じはそんなに息が通らない感じては無いのですが、やはり指の違和感がすこしあります。
で、その後ペンチや金槌の柄に塗ると乾いたらゴムのコーティングになる溶剤をホームセンターで買ってきました。缶を開けるとドロッとした水糊のようなものがあり、そこに静かにバネを半分浸けます。逆さまにしてバネを置き乾くまで待ち、乾いたら反対側を浸け、同じように乾かします。(乾くまでシンナー臭い)チューブを巻いたのより縮めた時の高さはノーマルの時に近くなりました。
しかし、ゴムなので縮めた時にバネがくっ付き、離れる時に少し時間がかかります。もしかして長い間ピストンを押していたら(例えば何小節かの伸ばしの時)に、ピストン離したら上がってこない、なんて事にならないかと思い、バネ表面のゴム部分にバルブオイルを塗ったところ、問題なく動くようになりました。振動もなく快適でしたが、しばらく使っているとオイルでゴムが溶けてしまい、デロデロになっていました。
これじゃイカンので結局ゴムのコーティングも剥がして使ってましたが、やはりバネの振動音も気になるし、少しバネが弱い気がして(私のYEP321SSはピストンボタンの貝の代わりにソーダライトと言う天然石をはめているので重いみたい)なにか良いものは無いかと探していた所、ヤフオクでミードスプリング(ノンコンペ用)と言うのを見つけて購入しました。太さ、長さ的にもピッタリで、ビニールチューブでコーティングもされており音も静かで快適~


その他. マウスピース(SM4B)の加工
私は321の時はデニスウィックのSM4Bを使っていましたが、2012年4月から太管の楽器で使っているデニスウィックSM5Uのリム幅とボア(スロート径)と同じになるようSM4Bを加工しました。
SM4Bリム幅6.72 ボア7.38 だったのを、
SM5Uリム幅6.30 ボア7.40 と同じにしています。
カップの内径は元々SM4Bの方が大きいですが、リム幅を0.42mm薄く、ボアを0.02mm広くしています。
ヤマハユーフォニアムYEP321という楽器について
YAMAHA YEP321は「入門用の楽器」とか「初心者用の楽器」などと言われることも有りますが、実はこの楽器、ヤマハが現在発売している管楽器の中で、唯一「大きな設計変更が無いまま50年以上製造されている楽器」「基本設計をヤマハの前身、Nikkan(日本管楽器製造株式会社)が行った、現行品で唯一の楽器」という、たいへん由緒正しい楽器なのです。この楽器は、1967年、「Nikkan Imperiale EP-1」として発売されたのが始まりで、本当に歴史ある楽器です。
この楽器、シャンクがスモールなので、「細管」と言われていますが、ユーフォニアムで言う細管や太管とはボアサイズではなくマウスピースを嵌める部分の規格を表します。
簡単に言うと、スモールシャンクのマウスピースを使う楽器が細管、ラージシャンクのマウスピースを使う楽器が太管となります。(これはユーフォニアムに限ります、トロンボーンなどではまた違ってきます)
YAMAHAの「YEP-621S」が良い例で、ボアサイズは「YEP-321S」と同じ14.5mmですが、マウスピースはラージシャンクです。(第4抜差管のボアサイズは違っています)。
現行のBesson BE2052 Prestige と比較しても、ボアサイズで0.5mmの差しかありません。実際、この楽器でも、しっかりとした息を吹き込んであげれば、舶来品・YAMAHA上位機種にも引けを取らない良い音色を奏でてくれます。
私は、クラシックの殿堂と言われるザ・シンフォニーホールやいずみホールでの本番でも使用した事が有りますし、リサイタルでもこの楽器で1曲ソロを演奏しました。
また、中高生の為の初心者講習会や小学生の為の講習会などで、「君たちが使ってるのと同じ楽器でもこんな音色が出せたり、こんな演奏が出来るんだよ」とも積極的に使用するようにしています。
2代目YEP321SS
二代目 ヤマハユーフォニアムYEP321SS改
2013年3月に入手した初代YEP321SSですが、長年の使用で黒ずんで来たことや、元々1番ピストンの裏側のメッキが剥げていたことも有り、この度買い替える事になりました。
2021年に程度の良い321Sを2本、ヤフオクで入手しました。そのうちのより程度の良い方を金管楽器工房永井さんに依頼して
リペア&サテン化してもらいました。(初代はリペアは管楽器工房KBFさんでしてもらってから永井さんにサテン化のみしてもらった)
2代目の321Sは、シリアルナンバーでは初代より500番程古いですが、メッキの剥がれや大きな凹みも無く、またスライドやピストン内もとても綺麗でした。
第5ロータリー付き4番スライド、アマドウォーターキイを取り付けた1・3番スライド、BUZZボトムキャップ、シクサージャパンの天然石ピストンボタン、ミードスプリング、Klangのフェルト、ヤマハウォーターポッドは2代目に引き継ぎました。
(Klangの樹脂製バルブガイドは、2代目のリペア時に永井さんが新たにつけてくれたので、そのまま初代に残しました)
2度のリサイタルでの使用や、シンフォニーホール、いずみホールなどでも演奏した名残惜しい楽器ではありますが、2代目321SSのリペア&サテン化費用捻出の為、初代321SSはヤフオクで2023年7月に販売済。



2本並べて撮影


リサイタルで使用の様子


小学生の為のレッスンと成果発表演奏での様子



金管楽器工房永井室長 永井豊治さん
金管楽器工房永井の室長である永井豊治さんはバリトン・ユーフォ奏者。昭和44年にヤマハへ入社され、昭和46年より管楽器試作及び高級機種制作に携わりました。ヤマハで発売されたユーフォニアムの実に8割にも及ぶ機種の開発を手掛けたそうです。
定年後シニアパートナーとして従事、現在のオーナー中村好孝さん子息宅の1階で2013年4月に工房を開かれました。
ヤマハの古いカタログやニチモというところから出ていたユーフォニュウムのプラモデルのパッケージに写っているのは永井さん
本人だそうです。
サテン化の作業はガラスの小さな粒を吹き出す機材が外に飛び散らないようなショーケースのようなスペース内に有り、ケースの壁面に有る穴から手を入れて作業するそうです。そのケースはユーフォニアムがギリギリ中で取り回し出来るくらい位の大きさという事で、ユーフォのサテンは体力的にもキツいので将来的にはお断りする事にもなるかもしれませんとのことです。
ユーフォニアムをサテン化したい人は、永井さんが対応出来るうちに依頼する事をお勧めします。

ニチモのプラモデル


1971年(昭和46年)のYAMAHAのカタログ
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